命の法灯
2025年10月16日 10:55
厳島の弥山へ向かう途中、
私はひとりで歩いていました。

山の空気は静かで、木々の間から光がこぼれていました。
ふと足を止め、
空海が灯したという“消えずの火”が燃える場所――
**霊火堂(れいかどう)**の前で手を合わせました。
その瞬間、
背中のほうからふわっと、温かいエネルギーに包まれました。
風ではない。
けれど確かに、何かが「いる」と感じたのです。
空海が1200年以上前に灯したこの火は、
「不滅の法灯(ふめつのほうとう)」と呼ばれています。
人々の手によって守られながら、
一度も絶えることなく燃え続けている。
けれど、その火が象徴しているのは、
お堂の中の炎だけではないのだと思います。
消えずの火とは、
人の中に燃える“命の光”そのもの。

人が生まれ、
形を変え、
やがてその姿を終えても、
命の光は絶えず灯り続けている。
ろうそくの火が一度消えても、
また新しい芯に火をともせば、
同じ光がそこに宿るように。
それは命が途切れるのではなく、
命が形を変えながらつながっていく証。
不滅の火とは、
時を超えて燃え続ける“命の法灯”。それは信仰の象徴ではなく、
命が命を照らし続ける自然の真理。火を守る人がいるのではなく、
光が人を生かし続けている。
霊火堂の前で感じたあの温もりは、
空海の火が包んだのではなく、
私の中の光が共鳴して広がったのかもしれません。
祈りも言葉もいらない。
命の法灯は、今も静かに私たちの中で燃えています…
